本書は、音楽CDの売上が15年で半減するという厳しい市場環境の中で、レコード会社をはじめとした音楽関連企業が不確実性と複雑性の問題にいかに組織的な対応を行ったのかについて解き明かしています。
これまでの音楽産業研究では、音楽ビジネスの不確実性に対する分析枠組みとして文化産業システムアプローチが採用されてきましたが、21世紀に入ってからの複雑性に対する分析枠組みはいまだ提示されていません。その現状を踏まえて、本書では複雑性の分析に有用なコンフィギュレーションアプローチを提示しています。複雑性の時代を迎えて、音楽関連企業が生き残るためには、文化産業システムとコンフィギュレーションという2つのアプローチに基づく組織マネジメントの実践が不可欠であると考えます。
また、現在、音楽産業は「文化」側から「商業」側に振れた組織マネジメントに移行しようとしており、それに伴い「文化と商業のジレンマ」がさらに増幅する可能性があります。その中で、音楽産業が再生を図りながら持続的成長を実現するには、文化と商業のジレンマを解消して、文化と商業を結びつける必要があり、そのためには豊かなクリエイティブ能力と高度なマネジメント能力を併せ持ったコンテンツプロデューサーを育成することが重要です。
本書は、音楽ビジネスはもちろんのこと、他のコンテンツビジネスのこれからの経営にも有益な示唆を与えるものと考えます。音楽はじめ、映画、放送、出版、アニメ、ゲームなどのコンテンツビジネスやICTビジネスの研究者や実務家にとってのおすすめの書です。
音楽産業は、デジタル化の波に最初に突入したコンテンツ産業であり、その動向や環境適応はコンテンツ産業全体の今後の行方に大きな影響を与えます。
本書では、経営戦略やマーケティングなどの経営学的観点から、音楽産業に構造的変化をもたらした環境要因を特定・分析するとともに、特に技術的要因(音楽配信をはじめとしたデジタル技術の進展)に焦点を当てながら、これが音楽産業を構成する諸要素ーアーティスト、音楽関連企業、消費者、ビジネスモデル、製品・サービス、戦略、組織、文化などーにどのような影響を与えたのかについて論じています。
そして、レコード会社をはじめとする音楽関連企業はどのような対応を迫られているのか、無料化の流れが加速するともいわれる「ポストiPod時代」の新しいビジネスモデルはどのようなものになるのかについて解説しています。
【学術論文】
【寄稿論文・その他】
【訳書】
21世紀の新たなミレニアムを迎えて、スマート・モバイル革命は、デジタル・インフラストラクチャの急速な拡充により、これまでの同一産業内での垂直統合戦略から、プラットフォーム上でのイノベーションを高める能力、すなわち、プラットフォーム戦略とジェネラティヴィティの競争へ移行しています。そこで、本書では、スマート・モバイル技術とICTの急激な環境変化に効果的かつ効率的に適合するための戦略的課題として重要なスマート・モバイル・ビジネス、モバイル・プラットフォームとジェネラティヴィティ、デジタル・インフラストラクチャとイノベーション等の領域に焦点を当てながら分析・考察を行っています。私は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のソレンセン教授(Carsten Sorensen)が書いた第5章「デジタルプラットフォームとデジタルインフラストラクチャーのイノベーション」の翻訳を担当しています。編著者:東邦仁虎、著者:Youngin Yoo, Carsten Sorensen, Ola Henfridsson, Ahmad Ghazawneh, Elizabeth Fife, 安重鎬, 板生清, 児島全克
【学会発表・講演・シンポジウム】